DOMAINE ICHI X STROHMEIER
ぶどうを濃縮させるには収穫量を抑えるのが定石です。そのためには房を切り落とします。しかし、ぶどうを野生に返すとどうなるか? 枝が伸びすぎ剪定せずとも一本の樹からの収穫量はどんどん減ります。メスを入れずに収量が 減るのです。そのぶどうには想像を超えるエネルギーが詰まっていくでしょう。種を残すための結実ですから。
同じくシュタイヤーマルクで別格の存在アンドレアス・ツェッペは言います。「Hello! Cut! Hello! Cut! は絶対ダメだ」つまり、伸びた枝や房を切り落としては絶対いけない、というのです。驚きました。世界でもこんな畑はまずない、と思いました。
時間がさらに経ったある日。私は、シュタイヤーマルクで受けた衝撃を再び受けることになります。しかも驚いたことに日本で。北海道でシュトロマイヤーそっくりの畑を見 ることになるとは夢にも思いませんでした、、。
余市仁木町。ベリーベリーファーム(後にDomaine ICHI ブランド)の上田一郎さんは、私達を自社農園の奥深く連れていってくれました。そこにはヤマソーヴィニヨンとヤマブド ウが、まるでジャングルのように生き生きと枝を伸ばしていたのです!
「こ、これは! まるでシュトロマイヤーではないかっ!」
BMOの面々の前に広がった、いや正確にいうと、生い茂ったぶどう樹が、自らのエネルギーを誇示しているかのようでした。もちろんテロワールも気候も違います。しかし、その決定的な畑のオーラを前に立ちすくんでいる私に、照れ笑いを浮かべながら、一郎さんはポツリと、「はあ、放置プレイで すみません(笑)」
しかし、恐るべき不耕作で放置畑のヤマソーとヤマブドウは収量が極端に少 ない。確かにこんな天然記念物のような畑は、広いはずがありません。ワイン造りに足る豊富 な収穫量は、ほぼ見込めないでしょう。
歴史的なロゼ・ペティアンの全てはここから始まった。(輸入元資料より)
無農薬のナイアガラを使い、全く酸化防止剤を加えないペティアン(微発泡)は、一郎さんが得意とするワインの一つです。しかも年々腕を上げてくる。
ナイアガラのようなジュース系ぶどうは、独特の甘い香りがあります。過度だと嫌う人もいます。一郎さんのワインはこの香りが微妙に溶け込んでくる不思議な魅力があります。
そんな一郎さんから「ヤマブドウのジュース・リザーブを加えて二次発酵させ、ペティアンの泡にしたらどうか?と思いまして、」と申し出がありました!
開墾以来、一滴の化学物質も入っていない畑。周囲を森に囲まれたその畑のエネルギーはこうしてナチュラルのままボトルに詰め込まれることになりました。歴史的なロゼ・ペティアンの誕生です。

