20歳未満の飲酒は法律で禁止されています
TOKAPUCHI / TOY HOPUNI 2021
原産国/地方:日本/上富良野町 トミハラヴィンヤード
タイプ:赤
品種:山幸100%(有機S認定圃場)
栽培:ビオディナミ
サイズ:750ml
※お一人様1本まででお願いいたします。
全房100%。クヴェヴリでの醸し6ヶ月間。野生酵母100%。バスケットプレスで低圧で圧搾。3ヶ月シュール・リー澱引き後、樽詰め。フレンチオーク古樽100%で7ヶ月間熟成後ビン詰め。無濾過、清澄剤不使用。補糖、補酸なし。S02無添加。アルコール度数: 12.5%
ワイン名の由来
トイホプニはアイヌ語で起き上がる土を意味。
長期間、果皮や種に浸かりながら発酵や熟成が行われるため、ぶどうの成分がよりワインに染み出し複雑な香りや味わいを醸し出します。土の特徴を引き出すぶどうが収穫され、クヴェヴリで醸造することでさらに大地の力を表すワインを造ることができました。
ティスティングコメント
外観はやや淡く、赤みを帯びたルビー ロ当たりはさらりとしていて。ドライフラワーや腐葉上の香りとスパイシーさを感じ、梅やべリーのフルーティーな味わいがあり、伸びやかな酸が全体の味をまとめています。
豚肉の煮物やきんびらごぼう等和食によく合います。酸化の影響を受けやすいワインですので抜栓後はあまり日を置かずにご賞味ください。(輸入元資料より)
<トカプチについて>
北海道の地ブドウである「山幸」。知られていませんが、OIV(国際ブドウ・ワイン機構)で、日本産として甲州、マスカットベリーAに続き、3番目に品種表示が認定された名ブドウです。
この山幸で造られた「あるワイン」を口にした時の「初めて感」。それは私のワイン人生でも驚きの初体験となったのです。
その時の驚きは、2つありました。
●1つは、風味。今までのどの品種にもない、どこかオリエンタルな。
●2つめは、圧力!笑。言い換えればパワーであり「エネルギー」でしょう。風味をかいくぐって出てきた圧倒的な力。「な、なんだろう?」と、驚きながら私の好奇心はどんどん山幸にそそられていきました。
実は、このエネルギー。どんな山幸にも共通ではなく「ある畑の山幸」だからこそ持ち得たのだと、後で分かったのです。いてもたってもいられなくなり、私は、その畑「トカプチ」がある、北海道の上富良野へ飛びました。
【1】上富良野の畑
グーグルマップを見つつ、待ち合わせの畑の前で車を停めます。
「ここがトカプチの畑です」と言われなくても、「自然度満々の畑」を見た時、ここだ!とすぐに分かりました。
フカフカの足元。耕すことない元気な下草。伸びまくった枝!
国外内で膨大な数のナチュラル栽培を見てきましたが、自然度で最先端の畑と引けを取りません。もちろん無農薬、無化学肥料であることはすぐに分かります。畑で待ち合わせたのは遠藤智樹さん。トカプチ・カミフラノイ農場の責任者です。その日は、共に延々と畑を歩き、熱いナチュラルトークの応酬。これだけのナチュラルな畑を育てあげる人物です。その熱量は半端ではありません。その内に、彼の口から驚くべき言葉が飛び出しました。
「ボルドー液も使わないんです」
専門家ならわかると思います。ボルドー液は、硫酸銅と生石灰の混合。ビオディナミ農法でも使用が認められているベト病対策であり、これだけはナチュラルな造り手も使います。しかしボルドー液を撒かないでも大丈夫だと。これは一体どんなことなのでしょうか?
ではここで、遠藤さんに登場してもらいましょう。
「私たちは、農作物のことをいつもいつも考えています。農作物に化学肥料や農薬を使用すると、いつしか天候の変化や害虫への対抗力が低くなってしまうのです。人が介入し化学肥料や農薬に頼った栽培方法は、天候や環境の変化に耐えきれず悪影響をもたらします。自然な環境を整え、ブドウがストレスなく畑の生態系と共存できることが健康で生命力に満ちた果実を付けると考えています。」
化学物質は、長い目で見れば、植物が自分で生きる力を奪っていくのは、知られているところですね。
「そのためには、地域の気候や環境に合ったブドウ品種を選ぶことが大切です。北海道に自生していた山葡萄。そのルーツを持つ山幸こそが適格であると直感しました。 山幸は粒の密着度が低いバラ房。だから灰色かび病などの病気に強いんです。耐寒性があり、冬場雪の中に樹を埋める必要がない。なので自由な仕立てができます。」雪中は地上より温度が高いから、一般的に北海道のブドウは冬場雪の中に埋めて凍死を避けますよね。
「様々な環境作りの方法や、ぶどう樹の仕立てを徹底的に試したんです。ブドウがストレスなく健康で生命力に満ちた果実をつけるような栽培方法はなんだろうか? それを受け入れる山幸には、凄まじい可能性を感じています。(遠藤さん談)」
ボルドー液を撒かずとも元気。生き生き育つブドウ! それが日本で存在する!心底驚きました。
【2】ロレンツォとアントネッラの教え
この時、私には心から尊敬するイタリアの故ロレンツォ・コリーノ先生の圧倒的な言葉がよみがえってきたのです。先生は、農学博士でもあり、また実際に農業を営み、ナチュラルワインの生産者でもありました。生涯で手掛けた蔵元は2つ。実家のカーゼ・コリーニとトスカーナのラ・マリオーザのみです。 テロワールと環境に対する深い考察と実験の成果は、「メトード・コリーノ」として、今もアントネッラ女史がトスカーナの蔵元ラ・マリオーザを通して発信。世界から注目され続けています。
先生は著作の中で、「そもそもオーガニック栽培出来ないような場所でブドウを育てること自体、間違っている」と、喝破されています。 先生の話は、ここでは深追いしません。しかし、この論でいえば、上富良野と山幸の組み合わせは、まさに先生のいう理想のテロワールになるのだと思います。畑を歩き、遠藤さんと対話すればするほど、このワインが「ナチュラルな日本ワインへの新しい姿」を提示することになるだろう、という予感は「確信」に変わりました。
BMO史上2つめとなる日本ワインの「トカプチ」。余市仁木町の「ドメーヌICHI」に続く渾身のナチュラルワインです。
そして、もたらされる味わいは「何とも似ていない」。「典型的なナチュラルワイン」という言葉を時々聞きます。しかし、典型ってなんでしょうか?地球上にはまだ出会ってない味覚があるのだなあ・・・と、あらためて実感しています。
【3】食とのペアリング
2022年十月。私は不思議な体験をしました。その舞台となったのは、なんと京都の日本海側、伊根の海辺です。私が心酔している日本酒「京の春」の蔵で、夜、宴会が始まりました。
3歩進めば海。そんな蔵の外での宴なので、だんだん寒くなってきたのです。
燗酒メインの中に、私は時々持参したナチュラルワインを差し込んでいきました。 3本目。クーラーに入れずとも、ボトルはグングン冷える夜中。トカプチの山幸を宴に投入したのです。 地で揚がった白身の刺身と冷え切った山幸。普通なら合わせないでしょう。しかし、白身を噛みつつ、グイっとグラスから山幸を放り込んだ時、体が浮き上がるような快感が襲ってきたのです。「すこぶる気持ちいいっ」これが第一印象。10人メンバーが目を見開き、グイグイグラスが進んだことをよく覚えています。
「山幸の個性と合うのは、アジア料理のようなスパイス感」と言われることが多いようです。 しかし、この夜は違っていました。合う合わないという次元の話ではなく、体全体で美味しさを感じる不思議なペアリング体験でした。
【4】栓を抜いて・・・
開栓後、ワインの味わいがいつまで保つか?は、しばしば話題になるところです。(SO2過多のワインは論外として笑)添加物を使わないナチュラルワインは、早くオフフレーバーが出たり、苦労する場合もあります。
そこで、山幸で抜栓放置の実験をしてみました。(日毎の結果は中略します) 驚いたことに、なんと10日経ってもへこたれない結果となったのです。それどころか、日に日に美味しくなるではありませんか!
SO2を全く加えないワインとして、異例中の異例。もちろんPHが低い(酸度が高い)など、味わいが落ちない要素は多々あるでしょう。 しかし、ブドウそのものの生命力。そこに起因することは、もはや疑いようがありません。 (10日以上はどうですか?って? おそらく保つはずです。飲み切ってしまったので、また追跡します笑)
【5】夜も更けて
話を上富良野に戻します。畑を歩いた夜は、遠藤さんや、社長の伊藤さん。そして、トカプチの熱い面々と、宴会をご一緒しました。農場を経営するのはアグリシステム。帯広に本社があり、真っ当な有機の麦や豆などを長く栽培。歴史があり、新しい再生型のオーガニックを突き進めているパッションの塊のような会社です。 社長の伊藤さんも語り口も、これまた飛び抜けています笑。
「今、アンフォラを作ってもらっているんですよ、イタリアで。それで、私たちが素晴らしい力を認めている生体エネルギーの水(パイウォーター)をイタリアに送ったんです。」
「えっ?、 伊藤さん、送るって、まさか!?」
「そうなんですっ、千倍に希釈してですね、その水を使ってアンフォラを作ってもらうんですよ!」
「・・・・汗」
遠藤さんも負けていません。
「アライグマの皮を焼いてですね、その粉を撒くんですっ。するとブドウや芽を食べちゃう動物が来ないんです」 「十勝と比べると、この上富良野は山幸の栽培に向いていると思いますよ。糖度も十勝では22度がマックスだけど、ここでは23、24度まで上がる。いやあ、山幸は強いですよー。雪に強い、冬の枝おろしが無しでOKなんです。」
「本物の有機栽培をすれば、ブドウ枝は腐らないで枯れるんです!」
「(どこぞとはいいませが笑)冷凍果汁なんて使わないですっ。冷蔵庫も使いたくないくらいっ」「(名前はあげられませんが)某北海道の造り手団体が、畑の見学にトカプチに来たんです。でも、自然栽培の話には、全く興味なし笑。どんなに力説しても、見向かれなかったです。だから(BMOの)皆さんと、もう一回話したくて、会いたくて! 笑」
延々と続く、ナチュラルへの熱い想いの応酬。あのワインに溢れるエネルギーは、当然、造る人のエネルギーが思いっきり込められていることは疑う余地がありません。
「ナチュラルワイン」とは、その地ならでは、そこに根ざすブドウならでは、それを造る人の情熱と技ならでは。その全ての「ならでは」がボトルに包括的に詰め込まれた「典型の無い」飲み物なのだと思います。
■データ編
●上富良野の畑
敷地は3ヶ所。現在7.5haで内5反(ほぼ5ha)がワイン用。スタッフ1名、アルバイト2名で切りまわす。標高280m。
●土壌
軽石が多い火山灰で栽培が難しい土壌が多い。メインのブドウ栽培は軽石のない火山灰&粘土土壌。(粘土風化火山灰)
●醸造
2018年が初醸造。
2021年は10月15日収穫
2018年から2022年ヴィンテージまで、10Rワイナリーにて委託醸造。
2023年ヴィンテージから、自社ワイナリーを上富良野の畑脇の斜面に建設し自社醸造へ。
●ブドウと栽培
品種=山幸のみ。これからも山幸一筋。山幸のテロワール違い、醸造違いが各キュベとなる。
元の苗木=十勝ワイナリーから。以降、自園の枝をセレクションマサル。接木は無く自根。
樹齢=古いもので8年が最古。
認証=有機JASも取得済みだが、JAS認定で使ってよいものも使ってない。
自然栽培=ビオディナミ。ディナミゼの内、500番は自分たちで作る。無農薬で、さらにボルドー液も使わない。つまり一切何も撒かない。素晴らしい生命力がある山幸だから。寒い地域でもしっかり育つ。
平均収量=500キロ/10a=5t/ha
剪定=下垂式コルドン。母木を高くし、そこから枝を伸ばさせる。これにより、地表から高い位置に房がつく。山ブドウ系のクセとして、枝が垂れて房がつくため。
意義として、5月の遅霜からも守られる。霜は1.5m位までが影響受けるため。またアライグマは手でブドウを食べるが、届かない。作柄2021年=「暑いのは良かったですが、窒素不足で、発酵がスタックし大変な年でした。特にペティアン造りは難しかったです。しかし、最終的に素晴らしい品質のワインとなり感謝しています。」
■蔵元からのメッセージ「ぶどう栽培とワイン醸造の取り組みについて」 トカプチ・カミフラノイ農場 ワイン事業部 遠藤智樹
【1】自然なブドウ栽培への取り組み
北海道上富良野に農場はあります。
●トミハラヴィンヤードの地形と気候
トミハラヴィンヤードは大雪山系と夕張山地に三方を囲まれた富良野盆地の東側、南西斜面の小高い丘にあります。春から秋にかけて山の谷間を南風が吹く、昼と夜の気温の日較差と夏と冬の気温の年較差が大きい内陸性気候です。こうした気候はぶどうの生育に適した気候とされ、近年では生育期間中の降水量が少なく日照時間も長い傾向で、凝縮した健康で良い果実をつけます。
●ビオディナミをきちんと! = ビオディナミによるぶどう栽培
ビオディナミを実践し、厳格な自然派ワイン造りを行っています。バイオダイナッミク調合剤を農場で自作し、散布することで畑の環境を整え健康で生命力に満ちた土とぶどうをつくります。牛糞堆肥にバイオダイナッミク調合剤を入れることで完熟した良質な堆肥を作成し、さらにぶどうの搾りカスや剪定枝を混ぜて堆肥化して畑に還元し、循環させています。
●畑を作る!
畑の排水性を良くするため、暗渠管を入れたりすることがありますが、カミフラノイ農場では畑の周りにクルミ、白樺、イタヤカエデ等の樹木を植え排水や風の通りをデザインしています。花の咲く植物を畑の周りに植えることで、様々な虫や動物が集います。
豊富な生態系によりぶどうの害虫のみ大量に発生してしまうことを防いでいます。また、畑の除草も最低限にとどめ、虫の発生時期からタイミングとバランスを見て行っています。 ぶどうの垣根には防腐処理を行わず、カラマツの表面を焼いた木杭を使用しています。畑にはなるべく自然の素材のものを使用し、環境へ配慮しています。 ぶどうの畝間にはライ麦を蒔き、根を伸ばすことで耕盤層を破壊し、ぶどうの根が地中深くまで入りやすいようにしています。 地中深くまで伸びた根は畑の微量要素も吸い上げ、果実の味に影響を与えます。その土地ならではのテロワールを表現するワイン造りのための大事な作業です。
【2】ナチュラルなワイン醸造への取り組み
2023年の自社ワイナリー開設の前年度まで、10Rワイナリーにて委託醸造を行っています。
●いかに難しいか?
亜硫酸塩不使用、野性酵母での発酵、補糖や補酸行わず、清澄剤不使用でろ過も行わない、厳格なヴァンナチュール造りを学んでおります。また、発酵や貯蔵の容器はクヴェヴリ等自然な素材のものを用います。
コールドマセレーションやマセラシオンカルボニック等、山幸の特徴を引き出す技法を模索しています。
【3】山幸の可能性について
私たちは2014年よりブドウ栽培を初めました。
●なぜ山幸か? 土地に適した品種とは?
ブドウ品種の選定に悩みました。温暖化の影響を受け北海道ではワイン用のブドウ栽培やワイナリーが増加する中で皆ピノ・ノワール、ソーヴィニヨンブラン、シャルドネ、リースリングなどといったヴィニフェラ品種に取り組むワイナリーが多く、またそれに対する評価や注目を浴びておりました。
しかし、私たちの農場はバイオダイナミックファームです。
単に緯度だけではないのです。私たちのブドウ栽培に適した品種の選定にこだわりました。無農薬、無肥料、不耕起また、地域の気候や環境に合ったブドウ品種の選定が大切だと感じ山幸を選びました。
●収穫では
2018年の初収穫より、今年で5年目の収獲を迎えます。上富良野町のトミハラヴィンヤードは富良野盆地に囲まれ、昼と夜の気温の日較差と夏と冬の気温の年較差が大きい気候の山幸の栽培に適しており、毎年私たちにみのりの収獲を与えてくれます。ブドウはその年の天候の影響を大きく受け、品質の差、収量の差や害虫や病気の影響を受けます。
しかし、山幸は耐寒性や耐病性が強く、私たちの栽培方法でも大きな影響を受けず、決して多くはありませんが安定した収穫をもたらしてくれます。(山幸収量カミフラノイ農場:10aあたり500kg)
【4】農作物の本質
作物に化学肥料や農薬を使用すると、天候の変化や害虫への適用能力が低くなります。人が介入し化学肥料や農薬に頼った栽培方法は天候や環境の変化に耐えきれず悪影響をもたらします。
私たちは自然な環境を整え、ぶどうが負荷無く畑の生態系と共存できることが健康で生命力に満ちた果実を付けると考えています。そのために、地域の気候や環境に合ったブドウ品種の選定が大切です。
北海道に自生していた山葡萄のルーツを持つ山幸こそが適格であると考えました。山幸は粒の密着度が低いバラ房で灰色かび病などの病気に強く、耐寒性があり、冬場雪の中に樹を埋める必要がないことから自由な仕立てができます。
垣根の一番上のワイヤーまで母木を伸ばし、そこから新梢を下に垂らす下垂型誘引を一部取り入れています。山葡萄本来の仕立てに近く、ブドウ樹にストレスがない他、遅霜や動物の食害も防げます。
様々な環境作りの方法やブドウ樹の仕立てを試し、よりブドウがストレスなく健康で生命力に満ちた果実をつけるような栽培方法を模索します。山幸にはその大いなる可能性と将来性を感じています。